タンクへの転落事故が減らない理由
ニュースで報道されることも多い「タンクへの転落事故」。このような報道に対して、なぜタンクへ転落してしまうのか?なぜ転落事故が減らないのか?という疑問の声も聞こえます。
タンクへの転落事故が減らない理由、それはタンクの劣化に大きな原因があります。特にタンクの上部天板が経年劣化していて、作業中に天板が破損してしまい落下事故が発生してしまうケースが多くあります。
ここでは、タンクへの転落事故の他にも、タンクの劣化が及ぼす影響と、その解決策について考えていきます。
タンクの経年劣化の原因
タンク劣化の原因としては下記のようなものが挙げられます。
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機械的損傷
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化学的劣化(浸透、劣化、溶解)
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外部環境からの劣化
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製作時の欠陥
1.機械的損傷とは、過大な応力や繰り返し応力が負荷された場合に、き裂や破壊が生ずる現象です。これらの応力は、ノズルやアンカー固定部など応力集中部で高くなりやすいので、検査する場合はこれらの部位に注目して目視や浸透探傷などの評価を行なう必要があります。
2.化学的劣化には、内部環境から液やガスが浸透し、それによる樹脂や繊維の劣化、および溶解が挙げられます。内部溶液がFRPに浸透して、FRP内の層間の剥離や強化繊維(ガラス)を溶解させることもあります。これにより、FRPの強度低下を引き起こします。
塩酸環境で長期使用したFRPの断面を示します。内面側より黒色に変色した層が生じ、同時に強度劣化も生じます)溶解は、有機溶媒等でFRPの樹脂自体が表面から溶解し減肉する現象です。強化繊維の露出や樹脂からの剥離に至ることもあります。結果として、強度が低下します。3.外部環境からのFRPの劣化としては「紫外線劣化」が代表的です。紫外線により樹脂が劣化し、雨水等の作用もあり外面から減肉につながります。これにより強化繊維が露出に至り、FRP外面が白色に変化することもあります。
4.製作時の欠陥としては、層間や表面の不溶着や割れ等があります。これらはFRP製作時の検査で顕在化していなくても、使用中に機械的な損傷の原因になったり、腐食環境で局部的な腐食の起点となり顕在化することがあります。これを防止するためには、製作後の検査を高精度で行なう必要があります。
タンクの経年劣化が及ぼす影響
まずタンクの経年劣化が及ぼす影響は、タンクの天板破損です。
タンク内には、塩酸や硫化水素等の危険な薬品を貯蔵していることが多いです。このような貯蔵物が長い時間をかけて化学反応を起こすと、次第にタンク内が劣化する恐れがあります。特に気体が発生すると、タンク上部に溜まってしまい、これが天板破損へとつながります。
安全柵が剥がれて液漏れの発生
また、タンクの経年劣化によって安全柵が錆びてしまうこともあります。作業用の安全柵が錆びて剥がれてしまうと、作業者の命を守る安全柵がその機能を果たさない場合もあります。
タンクの経年劣化に対する解決策
タンクの経年劣化に対する根本的な解決策はありません。そのため、タンクの経年劣化状況を把握するために、タンクの劣化診断が必要となります。タンク内の貯蔵物には危険なものも含まれているので、専門業者に依頼してタンク劣化診断をしてもらう必要があります。
たかがタンクですが、タンクには、優れた耐薬品性、耐衝撃性、UV(紫外線)カット、場合によっては耐熱性や大地震が発生しても破壊しない堅牢性、そして環境への配慮を考えると撤去後に材料として再生が出来る点など、求められるハードルは厳しくなってきています。
タンクの劣化診断はもちろんのこと、使用される環境や貯蔵する薬剤に応じて最適なタンクを選定し、設置工事からバルブやポンプの点検まで一貫して対応できる業者を選定することが大切です。
タンクの劣化診断をご希望の方は、以下からお気軽にご相談ください。