
モーションリブのリアルハプティクス®は、人が持つ「力加減」をロボットで再現・データ化する技術です。製造現場の自動化だけでなく、研究開発における試験精度向上や品質保証の標準化、熟練技能の継承など、幅広い分野での活用が期待されています。
人の感覚を数値で扱う時代へ
製造現場には、「強く押し過ぎない」「少しだけ力を加える」「手応えを感じながら作業する」といった、人の感覚に頼る工程が数多くあります。精密部品の組み立てや研磨、コネクタの挿入、検査治具の操作などでは、わずかな力加減が品質を左右します。
こうした感覚は熟練者が長年の経験で身に付けてきたものであり、言葉で伝えることが難しいため、技能継承や自動化の壁となってきました。
その課題を解決するアプローチとして注目されているのが、モーションリブ株式会社が扱うリアルハプティクス®を中心とした制御技術です。
「位置」と「力」を同時に制御する
一般的な産業用ロボットは、決められた位置へ正確に動くことを得意としています。一方、対象物にどれくらいの力が加わっているかをリアルタイムで制御することは容易ではありません。
このシステムでは、位置情報だけでなく力情報も同時に制御し、人が感じる「力触覚」をロボットで再現します。さらに、モータの電流や動作情報から力を推定する独自の制御方式により、高価な力センサへの依存を抑えながら高精度な制御を実現しています。
また、遠隔地にあるロボット同士で位置と力を同期させることで、操作者は対象物に触れた感覚を感じながら作業できます。危険環境や人が立ち入りにくい場所での作業にも応用が進められています。

協働ロボット用遠隔操作・自動化ユニット「URH」はリアルハプティクス®を搭載。ロボットが接触した時の感触が手元に伝わるため、安全かつ簡単にロボットの遠隔操作や自動化を実現できます。

ロボット動作制作システム「SPX4」は、現場の人がロボット動作を「作れる、動かせる」製品です。一般的には難しいとされる「接触作業」や「曲線動作」も容易に作れます。また、ロボット動作の履歴データを活用して、動きの結果が正常範囲内かどうかを分析できます。
分析・品質保証でも活躍の可能性
この考え方は、ロボット分野だけにとどまりません。
研究開発では、材料評価や耐久試験など、一定の荷重を正確に加えることが求められる場面があります。力を安定して制御できれば、測定条件のばらつきを抑え、実験データの再現性向上につながります。
分析装置を扱う現場でも、試料の固定やプローブの接触など、わずかな力の違いが測定結果へ影響するケースがあります。接触荷重を一定に保つことで、より安定した分析が可能になるでしょう。
品質保証や品質管理では、操作感や組み立て荷重、耐久試験など、人の感覚で評価していた項目を数値として管理しやすくなります。評価基準の標準化や品質の均一化にも役立つと考えられます。
熟練技能を「データ」として残す
もう一つの特徴は、人の力加減をデータとして記録できることです。
熟練者が「いつ」「どの位置で」「どれだけの力を加えたか」を記録・解析すれば、これまで経験に頼っていたノウハウを客観的なデータとして蓄積できます。そのデータは教育や作業改善に活用できるほか、AIへ学習させることで、人に近い動作を再現することも可能になります。
人手不足が進む中、技能継承は多くの企業に共通する課題です。暗黙知を形式知へ変換する手段としても注目されています。
「力」のデータが新たな価値を生む
製造業では、温度や圧力、画像などのデータ活用が進んでいます。一方で、「力」はこれまで十分に活用されてきたとは言えませんでした。
位置や速度だけでなく、力まで含めて計測・制御・記録できれば、自動化の高度化はもちろん、研究開発、分析、品質保証まで幅広い業務の精度向上につながります。
ものづくりの現場では、「どこで作業したか」だけでなく、「どのくらいの力で作業したか」を活用する時代が始まろうとしています。その変化を支える基盤として、リアルハプティクス®を中心とする「力情報の取得」「力触覚伝送」「位置·力の統合制御」といった技術の応用展開に注目したいところです。
※リアルハプティクス®はモーションリブ株式会社の登録商標です。