製造現場における安全対策は、ハード(物理的な安全)対策とソフト(人的・管理的な安全)対策の両輪で進めることが重要です。本記事では、労働災害が発生するメカニズムと、ハード対策とソフト対策の違い、されにハード対策において有効なソリューションを事例を交えてご紹介します。

目次

  1. 第1章 労働災害が発生するメカニズム
  2. 第2章 ハード対策とソフト対策の違い
  3. 第3章 製造現場における事故件数と内訳
  4. 第4章 ハード対策(物理的対策)の具体例
  5. 第5章 ソフト対策(管理的対策)の例
  6. まとめ:ハード対策とソフト対策で組織全体の安全文化を醸成

第1章 労働災害が発生するメカニズム

1-1 スイスチーズモデルとは

労働災害の発生メカニズムを説明する代表的な理論が、英国の心理学者ジェームズ・リーズン博士によって提唱された「スイスチーズモデル」です。このモデルでは、組織における安全対策を、穴の空いた何枚もの「スイスチーズのスライス」に例えます。

  • チーズのスライス: ルール、設備、教育、監督といった、事故を防ぐための「防御壁」
  • チーズに空いた穴: それぞれの防御壁に潜む、潜在的な欠陥やヒューマンエラーなどの「弱点」

通常、危険(ハザード)はチーズを何層も重ねることによって、どこかのスライス(防御壁)によって遮断されます。

しかし、複数の防御壁に存在する穴が偶然にも一直線に並んでしまったとき、危険はすべての壁をすり抜け、重大な事故が発生する、という考え方です。


出典:Wikipedia「スイスチーズモデル」

1-2 事故が起きるまでの各層(防御壁)の解説

スイスチーズモデルにおける各層(防御壁)は、単一の要素ではなく、物理的な設備である「ハード的要因」と、ルールや意識などの「ソフト進的要因」の両面から成り立っています。考え方として、防御壁の数に制限はありません。


出典:「 新型コロナウイルス対策に関するスイスチーズモデルの図(日本語訳、改定版) 」
https://figshare.com/articles/figure/The_Swiss_Cheese_Respiratory_Virus_Defence/13082618?file=29049645

新型コロナウィルス対策では、何層もの防御壁を重ねて分析しています。

しかし、防御壁を4つの層に分けて考えると課題や対策が整理しやすくなります。

  • 第1層(組織・経営層)
    ハード面: 安全設備(検知器や防護装置など)への投資判断
    ソフト面: 経営姿勢や安全第一の組織風土の構築
  • 第2層(管理・監督)
    ハード面: 現場監督者による危険状態の是正、設備の保護具の設置
    ソフト面: 明確な安全ルールの策定、無理のない工程表の作成
  • 第3層(環境)
    ハード面: 狭小な作業スペースや通路、清掃されていない設備
    ソフト面: マニュアルの習熟、必要なスキルの習得の時間が不足
  • 第4層(本人)
    ハード面: 防御手袋を未着用
    ソフト面: 注意力欠如、心理的プレッシャー

このように、ハードとソフトの両面、あるいはどちらか一方が機能不全に陥ることで、防御壁に「穴」ができます。そして多層に重なった「穴」を危険が通り抜けた結果、最終的に作業員の不安全な行動(即発的エラー)が引き金となり、事故が表面化するのです。

第2章 ハード対策とソフト対策の違い

労働災害を防止するためには、各層に含まれる「ハード的要因」を強化するハード対策と、「ソフト的要因」を強化するソフト対策をバランスよく組み合わせることが重要です。

労働災害防止の基本は、まず第一に設備面でのハード対策を行うこととされています。

これは 「人間はミスをするものである」という前提に立ち、仮に人間がミス(ヒューマンエラー)をしても、それが事故に直結しない仕組み(システム化、バックアップ、フールプルーフなど)を整えるすることが最も確実だからです。

しかし、すべてのリスクをハード対策だけでカバーすることは技術的・費用的に困難です。そこで、ソフト対策を組み合わせて実施する必要があります。

ハード対策(物理的対策)とは

ハード対策の定義:物理的な設備や環境を改善することで、危険源を根本的に排除または低減する対策。具体例には、インターロック(安全カバーを外すと機械が自動で止まる)、エリアセンサー、自動バックアップ、物理的な安全柵の設置などが挙げられます。

ハード対策の特徴

  • 人的要因によるミスが発生しても、事故を防ぐ効果が高い
  • 一度導入すれば、継続的な効果が期待できる
  • 導入にコストがかかる場合がある

ソフト対策(管理的対策)とは

ソフト対策の定義:作業者の意識向上や行動変容を促すための対策、および組織全体の安全管理体制の構築。例えば、機械の修理や調整などの際には、作業の性質上、安全カバーを取り外す必要があり、ハード対策が機能しない場面が生じます。こうした際に、「メインスイッチをオフにする」という作業手順の定義、危険予知(KY)活動、教育訓練やルール順守といった管理もソフト対策に含まれます。

ソフト対策の特徴

  • 作業者の安全意識や知識を高め、安全な行動を習慣化する
  • 組織全体の安全文化を醸成し、継続的な改善を可能にする
  • 効果が現れるまでに時間がかかる場合がある

前章で述べたように、製造現場における安全対策は、ハード対策とソフト対策の両輪で進めることが重要です。設備の安全化や作業環境の改善に加えて、作業者の安全意識を高め、組織全体の安全文化を醸成することで、事故の発生は未然に防ぐことができます。

第3章 製造現場における事故件数と内訳

製造業における死傷者は2025年のデータで約26,000人/年に上ります。死亡者数は115人でした。休業を伴う死傷者は全産業で最も多い水準です。死傷災害件数を型別にみると多い順に下記5つの原因があり、これらで製造業の死傷者数の75%を占めます。

1.はさまれ・巻き込まれ

【HACCP対応】微生物リスクを短時間で定量的に判断できる「非培養微生物迅速検査装置」
機械やコンベアなどの設備に手や衣服等が巻き込まれることによって発生します。
特に重大な死傷事故につながりやすい傾向にあります。

2.転倒

【HACCP対応】微生物リスクを短時間で定量的に判断できる「非培養微生物迅速検査装置」
床がすべりやすい状態であったり、作業場の整理整頓が不十分であったりすると発生します。

3.墜落・転落

【HACCP対応】微生物リスクを短時間で定量的に判断できる「非培養微生物迅速検査装置」
高所作業における安全帯の不使用や柵の老朽化により発生します。

4.切れ・こすれ

【HACCP対応】微生物リスクを短時間で定量的に判断できる「非培養微生物迅速検査装置」
工具の使用だけでなく、突起物の加工、金属やガラス、回転体との接触などにより発生します。

5.運搬・搬送時における動作の反動・無理な動作

【HACCP対応】微生物リスクを短時間で定量的に判断できる「非培養微生物迅速検査装置」
重量物を持ち上げる、工具や機械の反動、急に体勢を変える・バランスを崩した際に筋肉を傷めるなどといった原因が考えられます。

製造業は元来、機械や重量物を扱う作業が多いためこうした災害が発生しやすい状況にあります。
上記以外にも、化学物質や薬品を使用している場合は有害物質の吸入や接触等、リスクとは切っても切り離せない関係にあります。

第4章 ハード対策(物理的対策)の具体例

ここでは、厚生労働省の「職場の安全サイト」から労働災害の事例をひきつつ、物理的なハード対策により事故が防げた可能性を探ります。

機械設備の安全化

医薬品製造工場の調剤ラインにて、エタノールで溶解したビタミン剤の顆粒を乾燥させていた際、乾燥設備が突如爆発する事故が発生しました。
事故当日、排気装置が稼働していないことに気づいた作業員がスイッチを入れた直後に爆発が起き、乾燥室の天井や扉が吹き飛ぶとともに火災が発生しました。
この事故により、現場にいた作業員6名が負傷しました。

事故が起きた主な原因は、爆発の3要素である「爆発性ガス」「酸素」「着火源」が揃ってしまったことです。

    • 爆発性ガスの充満: 排気装置が故障・停止していたため、加熱されて気化したエタノールが乾燥設備内で排出されず、短時間で爆発範囲(濃度)に達しました。
    • 着火源の存在: 使用していた乾燥機の操作盤内に、電気火花を発する構造の電磁開閉器が内蔵されており、これが点火源となりました。

この事故の場合、「防爆乾燥器」を導入していれば、以下の理由から事故を未然に防げた可能性が高いです。
本製品は、庫内外に着火源のない構造となっており、爆発の3要素から「着火源」を取り除くことで爆発を防止できます。

【爆発防止】着火源が無い防爆乾燥器
【爆発防止】着火源が無い防爆乾燥器
爆発事故は「着火源」「酸素」「可燃性気体」の3要素がすべて揃ったときに発生します。逆に言えば、1つでもなくすことができると、爆発は防ぐことができます!

作業環境の改善

工場で荷物用エレベーターから台車を引き出そうとした際、工場の床面とエレベーターの「かご」との間にあった段差に台車が引っ掛かり、転倒しました。
この際、積載していた製品が作業者の足の甲を直撃しそうになるという、重大な負傷を招きかねないヒヤリ・ハット事案が発生しました。

事故が起きた主な原因は、段差という抵抗がある場所で重量物を人力のみで扱ったことにです。

重量物の搬送業務は身体的負担が非常に大きく、人力に頼る作業環境では、段差を乗り越える際に無理な力がかかって台車の制御を失ったり、腰痛や転倒といった労災を誘発したりするリスクが常に存在します。

近年、作業現場に女性や高齢者が増えています。こちらのような電動アシスト機構があれば、以下の効果でヒヤリ・ハットを防げた可能性が高いです。

  • スムーズな段差通過: 最大総重量1,000kgまでの補助が可能な電動アシストにより、段差や隙間を通過する際も、安定した移動が可能
  • 操作負担の軽減: 既存の台車に後付けでき、操作にかかる肉体的負担を大幅に軽減するため、女性や高齢者でも安全に搬送作業が可能
  • 安全な職場環境の実現: 無理な力仕事を排除することで、転倒事故だけでなく腰痛などの労災リスクも低減し、人材の定着や効率化にも寄与
【転倒防止】後付け簡単!既存の台車に電動アシスト機構を追加
【転倒防止】後付け簡単!既存の台車に電動アシスト機構を追加
搬送時の負担軽減による労災リスクを回避!作業者の負担軽減だけでなく配送時間の短縮や配送量の増加により効率化も実現しました。

第5章 ソフト対策(管理的対策)の例

  1. 安全教育の徹底
    新規採用者教育、定期教育、特別教育の実施
  2. 作業手順の標準化
    作業手順書の作成、KYT(危険予知訓練)の実施
  3. リスクアセスメントの実施
    潜在的な危険源の特定と対策
  4. ヒヤリハット活動の推進
    事例収集と情報共有、対策の検討
  5. 安全パトロールの強化
    定期的な巡回と是正措置
  6. コミュニケーションの促進
    作業前のミーティング実施等

まとめ:ハード対策とソフト対策で組織全体の安全文化を醸成

ハードとソフトは独立したものではありません。「システムを操作するのは人間である」という観点から、両者を関連づけて一体的に運用することが安全性の向上には欠かせません。

安全対策は一度実施すれば終わりではなく、継続的な見直しと改善が不可欠です。定期的なリスクアセスメントやヒヤリハット活動を通じて、常に現場の状況を把握し、最新の安全対策を取り入れていくことが大切です。

また、弊社では製造現場におけるハード対策を中心とした安全対策に多数の実績がございます。お気軽にご相談ください。

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